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「仮想通貨に新たな動き」
2年前に取引仲介業者の経営破綻で注目を集めたインターネット上の仮想通貨、ビットコインが今、再び盛り上がりを見せ、世界で利用者が急速に増えています。こうした中、東京の電力小売り会社が電気料金の支払いにビットコインを導入することを決め、国内で初めて公共料金の分野での利用が始まる見通しになりました。
ビットコインは世界の有志が開発し、どの国にも属さないインターネット上の仮想通貨として注目を集めましたが、2年前、東京・渋谷にあった大手取引仲介業者の経営破綻で市場は衰退するという見方が広がりました。
しかし、再びここにきて世界で利用者が増え続けていて、流通量は日本円にして1兆円と1年前の3倍に達しているほか、国内でも2500の店舗ですでに導入されています。
こうした中、ことし4月に電力の小売りに参入した東京のガス会社が、ことし11月から、電気料金の支払い手段としてビットコインの導入を決めたことがわかりました。公共料金の支払いをビットコインで受け付けるのは国内初だということで、この会社では、将来はガス料金などにも導入することを検討しています。
ビットコインを導入する三ッ輪産業の尾日向竹信社長は「人口が減る中、これまでのガス事業が縮小する危機感があり、新たな客としてビットコインの利用者を開拓しようと導入を決めた。ビットコインの利便性は高く、新たな決済手段として使いたいというニーズに先陣を切って応えたい」と話しています。
ビットコインとは
ビットコインは、どの国にも属さない世界共通の通貨として、2009年に有志の手で誕生したインターネット上の仮想通貨です。
最大の特徴は、中央銀行のような流通を一元的に管理する仕組みがなく、取り引きの情報を暗号化して安全を保っていることで、決済や送金のコストが安いことも特徴です。
通貨と換金する「取引所」と呼ばれる仲介業者もあり、当初は投機目的が中心でしたが、世界では、さまざまな企業がビットコインを導入し始め、商品の売買をはじめとした決済に使っています。
その一方で、匿名で取り引きができるため、違法な薬物の売買など犯罪への悪用も懸念されています。
ビットコインで治療費支払い
東京・銀座で歯科医院を営む新谷悟さんは、ことし2月からビットコインでの治療代の支払いを受け入れています。
医院の端末で、ビットコインの財布に当たる専用のアプリを開いて治療代を入力すると、決済用の画面が表示され、患者のスマートフォンでそれを撮影するだけで支払いは完了です。
すでに日本人の利用者がいるほか、東南アジアから高額の治療を受けに来た患者が利用することもあり、クレジットカードと比べて決済の手数料も安いということです。
新谷さんは「財布から財布にお金が一瞬で飛んでくるのはすごいと思った。安全性や価値が確立すれば、一気に活用が増えると思う」と話していました。
ビットコインへの期待と課題
今回の公共料金の支払いは、ビットコインの決済サービスに当たる東京・渋谷のベンチャー企業が電力小売り会社と提携してシステムを作っていて、顧客はこのベンチャー企業にビットコインで料金を支払い、その分の日本円が小売り会社に入る仕組みです。
ビットコインをはじめとした仮想通貨をめぐっては、ことし5月、法律で「不特定多数の間で物品やサービスの購入に使える」と定義され、取り引きを仲介する業者には金融庁への登録が義務づけられました。
このベンチャー企業では、これによってビットコインの信用が上がり、さまざまな決済への活用が広がると期待しています。
決済サービスを提供するベンチャー企業、レジュプレスの大塚雄介取締役は「生活に関わるものがビットコインで支払え、ほぼお金と同義で使えるようになる時代の変わり目にあると思う」と話しています。
その一方で、国内での決済や海外への送金にビットコインを使った場合、税金の処理をどうするかが定まっていないほか、従来の通貨との交換レートが安定しないなど、普及に向けては課題も残されています。
国際大学GLOCOMの高木聡一郎准教授は「税金をどうするかとか、決算をどうするかなど、経済システム全体の制度がまだできていない。また、新しい技術だけに利用者もリスクについて学んでおく必要がある」と話しています。